西陣の朝は、路地からはじまります。表通りの喧騒からほんの数歩、細い辻を折れるだけで、時間の流れがふっとゆるむのを感じるはずです。

碁盤の目のあいだを毛細血管のように走る路地は、この町の暮らしそのものです。打ち水の匂い、格子戸の開く音、どこかの台所から届く出汁の香り。観光地図には載らない景色が、そこにあります。

朝の光は低く、町家の格子を斜めに射しては、土間に細い縞をつくります。その縞をまたいで、猫が一匹、悠々と横切っていく。西陣ではそんな朝が、特別ではなく日常として続いています。

チェックアウト前の三十分、あてもなく路地を歩いてみてください。角を折れるたび、この町があなたに見せてくれる表情が変わります。