この家が建てられたのは、明治の終わりごろのこと。西陣がもっとも活気にあふれ、町じゅうに機(はた)の音が響いていた時代です。

織屋建てという間取り

間口は狭く、奥へ長い。いわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれる京町家の典型ですが、この家は職住一体の「織屋建て」。かつては表で客を迎え、奥の作業場で織り子たちが手を動かしていました。天井の高い一角は、機を据えるために設けられた名残です。

百二十年のあいだ、家族が住み継ぎ、時代とともに少しずつ手を入れられてきました。柱の艶、敷居のくぼみ、磨りガラスのゆがみ——そのひとつひとつが、この家が生きてきた時間の記録です。

古いものを古いまま留めるのではなく、いまを生きる家として次の百年へ渡していく。滞在は、その長い物語のほんの一頁に加わることでもあります。