玄関を入ると、奥までまっすぐに土間がのびています。これが「通り庭」。表と奥をつなぐ通路であり、かつては炊事場でもあった、町家の背骨のような空間です。

火袋がはこぶ風と光

通り庭の上を見上げると、天井がぽっかりと屋根まで吹き抜けているのがわかります。これが「火袋」。煮炊きの煙や熱を上へ逃がすための工夫であり、同時に、高窓からの光を家の奥まで届ける採光装置でもありました。

間口が狭く奥に長い町家は、放っておけば暗く、風もこもります。通り庭と火袋は、機械の力を借りずに風をぬき、光を落とすための、先人たちの知恵の結晶なのです。

夏の昼下がり、火袋を見上げてみてください。上から降りてくる涼やかな空気に、百年前の暮らしの理にかなった心地よさを感じられるはずです。