西陣という名は、応仁の乱で西軍が陣を敷いた地であることに由来します。乱ののち、この地に織物職人が集まり、やがて日本を代表する織物の町となりました。

最盛期には、町のいたるところから「トントン、パタパタ」と機を織る音が響いていたといいます。人々はそれを機音(はたおと)と呼び、暮らしのなかの当たり前の音として聞いて育ちました。

いまその音は、ずいぶん少なくなりました。それでも路地を歩けば、ふと開いた戸口の奥から、たしかな機音が聞こえてくることがあります。手を動かし、糸を組み、布を生み出す。西陣の底には、いまもその営みが静かに流れています。

この家の高い天井も、かつて機が据えられていた名残。耳を澄ませば、百年前の音がまだどこかに残っているかもしれません。