百二十年の家を、いまを生きる宿として整えるにあたり、私たちは「何を残し、何を変えるか」に長い時間をかけました。
残したもの
柱や梁、土壁、格子、坪庭——家の骨格と表情をつくるものは、できるかぎりそのまま残しました。傷やゆがみさえ、この家が刻んできた時間の証として大切にしています。
変えたもの
一方で、水まわりや断熱、空調といった暮らしの快適さに関わる部分は、思いきって現代の技術に更新しました。古い家が敬遠される理由の多くは「寒さ」と「使いにくさ」。そこを解けば、町家はいまも十分に心地よく住める住まいになります。
守るために変える。変えることで守る。相反するようでいて、この二つは同じことの裏表です。滞在の心地よさの裏には、そんな小さな判断の積み重ねがあります。